倫理綱領

前文
 産業保健師は、公衆衛生看護を基盤に、労働衛生関連法令を含む産業保健に関する専門知識も活用し、労働者や事業者等との協働による、適切で充実した健康支援活動の実践を通して、公衆衛生の向上を目指す。
 この倫理綱領は、「産業保健師」のその職種の特性を考慮し、その業務の遂行にあたり、本会の会員が「守るべき最低限の基準」を示すこととした。

第1条(使命と責任)
 産業保健師は、労働衛生関連法令を含む産業保健に関する専門知識に加えて保健師の職能を発揮して、労働者と事業者等が自主的に安全で、かつ健康に働き続けるための支援に努めなければならない。

第2条(立場と契約)
 産業保健師は、労働者個々人だけでなく組織も対象とし、公平・中立な姿勢で業務に従事する。また、その立場・役割においては雇用者や他の産業保健スタッフや先輩・同僚の保健師と合意が得られるように努める。

第3条(品位の保持)
 産業保健師は、対象との家族的、個人的関係を避け、適切な距離感が保てるように努める。また、対象職場に適した言動や身なりを心がけ、身勝手な思い込みや行いによって保健師の品位を損わないよう留意する。

第4条(実践能力の明示と向上)
 産業保健師は、その業務にあたり、自己の実践能力を的確に明示した上で、雇用者や他の産業保健スタッフや先輩・同僚の保健師に相談し、協力を得て実施する。実践能力の向上のためには、実務に直結する研修だけでなく、本会が開催するキャリア形成としての研修制度や推奨する他団体の研修に参加し、有識者や熟練者の指導や助言も得て、 産業保健師として絶えず普遍的な能力の研鑽に努める。

第5条(情報の取り扱い)
 産業保健師は、国家資格である保健師としての守秘義務を優先するが、生命の危険や仕事への支障等から情報を開示すべき場合もある。この基準については、行政や学会等からの健康情報の取り扱いについての指針等を参考に、あらかじめ雇用先と合意を得るよう努める。

第6条(自己の安全と健康)
 産業保健師は、業務の遂行に際して心身ともに最良の状態を保持するように努め、日常の行動においても、常に身を持って安全衛生の規範を示す。

第7条(基本倫理の恒久性)
 産業保健師は、時代の変化に伴って保健師の雇用形態・立場が変化しても、産業保健師としての基本倫理を見失うことなく柔軟に対応していく。